第36章 隣には…
こんな腐り切った世界で生きていくことなんて
考えただけで笑えなくなっていた。
それでも…
笑うことを思い出したんだ…
それが、こんなに心地いいことだなんて思いもしなかった。
そして…
お前からもらった名を、忘れはしない…
恵土「またね、ヘブン」
辛そうな顔をしながらも、笑いかける。
また、会えると信じて…
天は繋がっている。
だから、いつまでも真っ直ぐに…
生きている限りまた会える。
もう大丈夫だと、信じて…
12年周期で玄界と接触する。
それが解った時、あと1年で接触すると解った時…
そんな迫害の中で生きていく状況が、どれだけひどく荒んだものかはわかっていた。
だからこそ、救い出したい気持ちでいっぱいになった。
俺を、あの地獄から救い出してくれたように…
あの悪夢から、笑顔を向けて幸せを感じさせるまでに導いてくれたように……
(満面の笑みで、幸せを感じて笑い合う日々が脳裏に浮かぶ)
おそらく、友がいないから
否定するものがいないから、誹謗中傷が激化していくんだろうと解った。
友が居れば怒り、止めようとしたり否定することもある。
だが、それがいないものは理不尽に言われ続けて終わりだ。
否定するものがいない分、言うのが気楽でいい。
だから遠慮も容赦もなく言い続けることができる。
どれほど思い詰め、自身を責め続ける結果になろうとも
例え、それで自殺しようとも
自分には関わり合いなどないから…
そんな奴等ばかりだったから嫌いになったのと同じように…
今、こちらではそういうことがない。
俺の場合は、そんな理不尽がたとえ小さなものであっても許せなかった。
恵土『理解するものがいるからこそ、救われることもある』
昔に言われた言葉が脳裏で今でも蘇る。
そしてそれは…
恵土に向けても言えるんじゃないのかとも思う。
恵土のデーターを取るのは二の次だ。
それよりも何よりも、救い出したかった。
あんな地獄を再び味わい続けているのならば
救い出したくて仕方がなかったんだ。
あんな悪夢は、もうこりごりだからこそ…
必死だったんだ……