第34章 未来の分岐点
恵土「…だからさ、私なんて死んでた方がよかったんだ」
太刀川「は!?」
恵土「過去を思い出さないようにしていた理由も
それを切り捨てたがってた理由も、ずっと考えてて…
今、やっと解った。
ただ、許せなかった。
悪いことをさせることのきっかけになった自分自身が。
自分自身が存在していたから「いじめ」って行為が実現した。
父親に「DV」ってことを実現させた。
その人たちを、悪いことをした人にさせてしまった。
自分さえいなければ、その分だけでも減ってたはずだった。
変わっていたかもしれなかった。
当時にそう考えてたことも、何度も心の傷がうずいておさまらなかった理由も
自分の中で整理もつかないまま、無理やり切り捨ててでも今を生きようとしてたからだった。
そうでないと、やっていられなかったからだった。
無理やり無視して、そうでもしてないと壊れてしまいそうだったから。
壊した人にさせたくないって
もっと悪いことをした人にさせたくないってのもあって、なおさらに。
その過去も、その当時に抱いていた辛い思いも…(涙目&拳握)
無視しようって、切り捨てようって強引に言い聞かせてたことも…」
そう言いながら、目に涙を浮かべながら
俺がいないベッドから見て正面の方を向いて、拳を握りながら呟いていた。
恵土「…
「DV」も「いじめ」もあったことも要因に入っていたけれど
自分が存在してちゃいけない存在だって言われて否定しなかったのも
そういう風に考えて、そう自分自身に対しても思ってたからだった。
過去は変わらないってことも
その当時に抱いていた感情も、苦しみも痛みも哀しみも恐怖も変わらないってことも
言われるまで、気付くこともなかった。
過去ごと感情も苦しみも、無理やり忘れるように切り捨てて
そうでないとやっていられなくて、強引に逃げようとしてばっかりだった。
ちゃんと前に進むためには
また勝手に思い出すことになっても、当時の感情に振り回されないように戦わないといけない。
涙が止まらないぐらい悲しんでても苦しんでても、それを忘れたらいけない。
それごと背負って、重荷だとしても
その過去から、前に進むために。
今は違うって解るまで。
解ってからも、ずっと…」