第34章 未来の分岐点
迅「知ってる」
風間「!」
迅「苦しんできたことも、その想いも…
俺も、こんな風に傷付いて死に掛ける未来なんて見たくなかった。
それでも、見据えるように言われたんだ」
サングラスをつまみながら言った。
風間「やはり、見覚えがあると思ったら
恵土先輩が、俺と会った時からかけていたサングラスなのか?」
迅「頷)このサングラスを
恵土先輩から託された時、俺は誓った。
『未来を見据えるためにも
その中にある、大切な未来を見失わないと。
人として生きる道も、見失ってはいけないものも
視えたもの全てと向き合って、その上で前に進んでいく』と。
だから…
今はこうでも、未来に幸せを感じて笑うことができる。
その未来が、これなんだ。
あれがないと、きっと学ぶはずだった大切な何かまで
きっと…
なかったことになってしまう。
そのチャンスまで失われてしまう。
風間さんの言った未来じゃ、おそらく…
そんな未来には辿り着けないと思うから。
それじゃあ、意味がないと思ったから……(うつむく」
うつむきながら、説明を続けていた。
黙ったまま、うつむいて聞き続けている風間さんに…
迅「…だから俺は…
この未来への大本(おおもと)を変えないまま、生き残る未来を望んだ。
そして、そのためには秀次の力が必要だった。
秀次が、恵土に一番近い場所に飛ばされる未来が視えたから…
合図をすれば風刃を解いて
普段使っているトリガーを発動させて、必死に駆けつける未来を。
そうすれば
モールモッドの動きをレッドバレットの重しで止め
確実に、恵土がこれ以上傷付かないよう仕留められる。
風刃に切り裂かれた後で、残った刃に貫かれる未来もない。
一番生き残る可能性が高かった未来はそこで
あとは、遊真に心臓を動かしてもらったことぐらいだった。
その上で
それ以外が全力で動けば、メガネくんは護れるから…
どちらも悲しくない方を取った。
結果的には成功したけれど、半分は賭けだった。
生き残るって信じて、恵土先輩を信じて…
託すことしか、自分にやれることをやるしか出来なかった……」
いつの間にか、声までもが震えだし
風間「!」
顔を上げた風間さんが、驚いた顔をした…
(迅が泣きそうな顔をしていたから)