第33章 時
その時…
兄「蒼、也…」
風間「!兄さん!」
兄「微笑)無事か…
よかっ、た^^」
兄は力なく呟き、震える左手で俺の右頬に手を触れた。
思わず、その手を握り締める中
風間「…ごめん。
俺が、言い出さなければ!」
その言葉に、兄は首をゆっくりと横に振った。
兄「お前の、せいじゃない…
お前が無事で…本当に、よかった^^」
風間「!」
今思えば、兄さんは恵土とよく似ていた…
いつも、俺のことを気にかけては
一緒に色んなことをして、楽しそうに笑っている人だった……
そして…
兄「決して憎むな…生きろよ(微笑」
その言葉を遺して…
力尽きたように左手を落とし、まぶたが閉じられた…
今思えば、おそらくでだが…
殺しに来た近界民も、助けに来た恵土も
両方共に憎まず、幸せになって欲しいという願いを込めていたのだと思う。
今までの想い出から見ても、そういう人だった…
そうして兄さんは
微笑んだまま、死んでいった……
治そうとしてくれたが
当たり所が悪く、兄は目の前で死ぬ結果となった。
それでも…
なぜか、俺の心には…怒りも何も湧かなくなっていた。
その後日、葬式に来てくれた…
通り魔事件として報道され、残された俺は両親と葬式に出ていた。
雨の降る中、縁側に座り
恵土も隣に座った。
長い沈黙の中
恵土は、葬式の時でも外さなかった『緑のサングラス』を触っていた…
何気ないそれが、とても印象深く
今でも焼き付いていて、離れてなかった…
白い地で青いラインの入ったジャージに
緑のサングラスをした、当時のその姿が……
長い沈黙を破り、本題に入ろうとした時
風間「…あの時は」
恵土「お辞儀)悪かった!
お前の兄は、私が殺したようなものだ。
あの時、私が助け出せていれば
もっと早くに駆けつけていれば!」
頭を下げて謝られた。
おそらく、自分のせいだと思っていたのだろう。
風間「いえ。
おそらく、本来ならば話せなかった。
しかし、あなたのおかげで話すことができた。
ありがとうございます(お辞儀」
恵土「!」
それに目を見開くそれは、兄の驚いた表情によく似ていた…
恵土「…そうか(苦笑」
苦笑する所まで…
そして、話は聴きたかった本題に入った。