第33章 時
その後、あの人が近界民に
知っていた世界を…
己にとって全てだった村を壊され、村人全ての命までもが奪われた事を知った…
東さんから聴いた時、驚きのあまり声も出なかった…
陽気で、ただ思いやりが強いだけの人だと思ってた。
不器用ながらに、ひたすらに相手のことを考えて
された気持ちも味わったこともない、優しいだけの人だと思っていた…
けれど、誰よりも真っ直ぐに進もうとしていた。
誰よりも近界民を憎んでいたはずのあの人が、耐えていた…
俺よりも小さな背で、必死に踏みしめていた…
選んだ、相手の幸せのために立ち向かい続ける道を。
その圧倒的な強さも、二度と失わないために
近界で、死に物狂いになって生き抜きながらも
こちらでも必死になって鍛え上げ
鬼神乱舞と…
伝説と謳われた『強さ』を身に付けたのだと、後で知った…
自分がとても、ちっぽけに見えた……
外見から脂肪だの肥満だと言われながらも
実際は筋肉で、片手逆立ちだって楽々できてて、写真ももらった…
(ホームページ参照。
18歳から今も筋肉質なのは変わらず、今も出来てます)
ひどいことも陰で言われていた。
実力は見るからに圧倒的なのに、外見から勝手に言われて
その上、何でも笑って受け入れる性格だから
周りはなおさらに助長して、罵詈雑言
それを見た時…
『近界民を最初から決めつけて
排除することを胸に置き続けていた自分』と、同じに見えた…
傍から見ると、こんなに醜いものだったのを知った…
人をののしり、決めつけ
それを言われる人の気持ちも考えず
言った後も、平然と悪いことをしてないように笑ってる…
それで傷付く人の気持ちも、考えてはいない…
そうか…
これが、恵土先輩の言っていた『見失うな』ということだったのか。
その時になって
恵土先輩の言葉の意味に、やっと気付いた。
それからB級にあがって、チームを組むはずだった時
俺は玉狛支部に行くことを選んだ…
あの人から、もっといろいろなことを教わりたいと思った
同じ痛みを、苦しみを理解しているあの人なら…
もっとたくさんのことを、一緒に学んでいけると信じることができたから……^^
(その背景には、皆で共に満面の笑みを浮かべる玉狛のメンバーがいた)