第33章 時
ただ、いつも見せてたのと同じ笑顔をしていた…
心から晴れ晴れとした笑みを浮かべて…
それから安心したみたいに笑ったまま
再び眠りにつく恵土先輩を見て、思った…
菊地原「っ…(涙目&震)
僕たちと、生きていたくないんですか?」
そう絞り出すように呟きながら、涙が落ちて
すぐに拭いた…
なぜか、涙がとめどなく溢れ出てきた…
自分のことじゃないのに、当の本人は悲しんでさえもいないのに…
なぜか、苦しくなって止まらなくなった…
気付けば
僕の心の中は歯止めに効かない感情で、いっぱいになっていた…
拭いても拭いても、とめどなく溢れ出ていって…
途中からめんどくさくなって、拭かなくなった…
菊地原「追い詰め過ぎなんですよ…
もう今は、そんな人はいないのに……
どうして、そんなになるまで…
追い詰められないといけなかったんですか……
それだけのことで…
人の『たった一つの行動』が、山ほど積み重なることで……
人生の価値観が、全て変わってしまった…
そんな人の気持ちが、それをやってきた人たちに解る?
そういうことをやった人が、そのことを何とも思わないまま
自分だけしか見えてなくて、その上無関心で
それごと、ただ平然と笑って生きていられるような人ばかりで…
実際、僕たちが関わってきた人たちって…
そういう人たちばっかりでしたね(苦笑)
(だから、常識がゆがんだ。
それを支えて、寄り添ってくれる人なんていなかったから…
助け出してくれる人なんて
恵土先輩以外、誰もいなかったから……)
解らないよね。
同じ目に遭ったことが無いんだから…
(ひねくれてるとか言われたこともあるけど…
それでも、それごと向き合って受け容れてくれた……
離れようともせず、寄り添ってくれたことが
いつものように満面の笑みを浮かべて、笑いかけて…
いつでも、どんなことしても
全力でぶつかり合えるのが嬉しかった……
僕にとっては、初めての人だったから……」
そう想いを語る中、涙は止まらなかった…
今まで過ごした時が重く辛かったからか
それが、あっという間に光に包まれたからか…
どちらかさえも、わからないまま……