第33章 時
菊地原「…そうですか」
それを聴いた後、目を伏せていた。
『一つの命が無くなった』という
耳がつんざくような『知らせ(悲鳴)』を聞きながら…
目を瞑って深呼吸をしていると
過去の思い出が頭によぎった…
今から1年と少し前、僕の誕生日よりも後…
恵土「う~!;う~!!;」
ベッドで、悪夢にうなされて悲鳴をあげていた。
菊地原「はいはい。大丈夫だって言ってるでしょ?
まったく;(溜息)
何だってお守りみたいになってるんだか;」
そう呟きながらも、頭を撫でていた。
安心させようとして…
目を覚ましても、涙を流しながら
必死に助けを求めるそぶりを見せていた…
すがるような目で両目から涙を零して
右手を必死に僕へ向けて差し伸ばして…
菊地原「これで何回目だと思ってんですか?
これで3回目だってのに(溜息)
(それだけひどい目に遭ってきたんだってことは解ってる。
風間さんから聴いたし、ある程度は妥協できる。
僕も僕で結構ひどい目に遭ってたし
それなら恵土先輩の場合はその倍以上。
だとしても、これだけひどいのはちょっと…)
いい加減にウザい」
冗談めいて軽く首に手をかけて、締めかけた。
いつもみたいに『何してくんだぁ~!』
って感じで拳骨してでもいいから、戻って欲しかった…
傍に居るだけで、いつでも笑ってられる…
笑えられる、あんな『いつもの恵土先輩』に……
けれどそれは…
思わない形で、砕け散った…
恵土「やっ…た……」
はあっはあっと悪夢から覚めた兆候故か
息があれている中、首を軽く締められながら呟かれた
最初、僕はその言葉の意味も解らず
信じられずに、黙ったまま目を見開いていた…
驚いて
恵土「…やっと、死ねる^^」
菊地原「!」
何の言葉もでなかった…
恵土「ありがとう^^
やった(涙&微笑)…
ようやく死ねるんだ^^」
菊地原「…憎くないんですか?」
恵土「え?」
菊地原「何で怒らないの?」
ただただ疑問だった…
何が、そこまで恵土先輩を突き動かすのか…
当時の僕には、解らなかった
それが、心の傷故のものなのだということを…
恵土「だってさ…
嬉しかったから^^」
何があそこまで変えたのか…
当時の僕は、まだ知る由もなかった……