第32章 奇跡
自分の存在が、関わった人たちを不幸にしている。
関わった世界そのものでさえも、不幸にしている…
そう、思った…
内臓を巻き散らかされたウサギを見て、泣きながら…
少し耳が動いたことで、生きてることに気付き
即座に始祖神の力を使った。
『化け物だ!』
そう叫ばれても、気にもならなかった…
ただ、助けたかったから…
また、姉と同じように失いたくなんかはなかったから…
そして蘇ったぴょん吉を抱き締めながら
震えが止まらず、そのまま泣きじゃくっていた…
鼻をひくひくさせながら自分へ向けて
臭いをかがれ、涙でぬれる左頬をペロペロとなめられた。
『よかった;…本当に、よかった;
愛してる;大好きだよ;』
なめられる中、そう言いながら背をそっと撫でると
今度は満足そうに左肩に頭を乗せ、頬に頭を付けたまま眠り出した…
護りたかった
自分が関わることで、味わうことになる苦痛から…
自分さえいなければ、きっと殺されかけたりはしなかった
自分さえ、いなければっ…
そのために
自分を殺すしかなかった…
自分が殺されかけたことに
傷付けられたことに否定すれば、そうした人は傷付く。
すると周囲が傷付けた人になり、周囲自身が傷付くことになる。
自分が存在しているせいで、そうなっている。
『お前が悪いからそうなったんだ』
口々に言われる言葉に
最初こそ、怒りも哀しみも痛みもあった…
それでも
それ以上に、周囲が傷付くのが嫌だった…
周囲から一方的に傷付けられる苦しみを知っているから…
一方的に言われて傷付く心境も解っているから…
だから、何も出来なかった
結局の所、無抵抗以外選択肢はなく…
気付けば、自分のそれに対しては『怒り』も何も感じなくなってしまった
不思議な感覚だった。
自分のことで言われて、それは普通嫌なはずなのに
今まで、そのはずだったのに…
おかげで、幸せそうに笑う笑みを見て気付いた。
あ。世界が幸せになってる。
そうなるためなら、何でもやろう。
自分はどうなってもいいや。もう何も感じなくなったから…
ただ、それよりも
周囲が笑って居られて、幸せで、本当によかった…
それだけだったんだ…
その時に抱いた想いも…感じたことも……