第32章 奇跡
恵土「はい?」
それに首をかしげる中…
風間は涙を流しながら、強く抱き締め
頭を撫でながらも、ずっと考え続けていた…
風間「価値観を壊され、謝られることもなく
謝られることがあったとしても、一回だけだったと聴いた。
長い年月の間言われ続け、歪んだ環境の中
精神が壊され、常識が覆され、終いには心までもがっ…
好き勝手に言いたい放題言い続け
あまつさえ、それを幸せに感じるほど精神を壊された…
それでありながら、周りは平然と幸せそうに笑うだけ……
自分だけが幸せなら、それでいいと考えるものばかり…
それが今でも、恵土先輩をここまでっ…
今でも縛り付け
『自らにされたこと』に対する『心』を押さえ込み
その『殺された心』が、蘇らないようにされているっ…
憎しみを蘇らせぬため、怒りを蘇らせぬため
それをぶつけることになるのを恐れてっ…
それによって、相手の幸せが損なわれることを嫌がってっ…
相手の幸せのために、今でもそれを殺し続けている…
今度は人ではなく、自分自身が常にっ!
何年も経った今でさえもっ…
それが…
いつまでも、まとわりついては離れられずにいるっ…)
今、解りました…」
恵土「?何が?どういうこと?」
?を上げ続ける恵土に対し
風間は涙を拭きながら、震えた声色のまま言い放った…
風間「恵土先輩が…
どうして、そのようになってしまったのか…
なぜ今でも、そのように在り続けているのかを……です。
だから…
すみませんが
そういうことがあれば、すぐにでも切り刻みに行きます」
恵土「?;
言ってることはあんまりよく解らんが、無茶はするなよ?
っていうかお前、減点食らったんだろ?
これ以上減点されたら危ないぞ?」
風間「大丈夫です。
俺が…
これ以上、壊させはしませんから」
恵土「?個人ランクのことか?
それならまあいいが」
その後、恵土に知られぬよう風間は暴れ続けていた…
これ以上傷付けさせぬため、必死になって……
それに事情を聴いた太刀川も加わっていた…
それにより
隊を組むに当たっても、二人は敬遠され続けた…
その約半年後、田中隊を組むことになったのは
本人が知り得ぬ理由であると同時に
上層部と風間と太刀川しか知らない事実であった…