第32章 奇跡
風間「あの人は…
近界民に全てを奪われ、近界で生き抜く間にも迫害され
それ以外においても
関わる人から裏切られ、孤立させられ
好き勝手に吹聴されては決めつけられ
最終的には自分から人に話しかけられなくなり
今でも特定の人にしか話しかけられなくなった」
そう言いながら、その男に対して歩み寄る。
太刀川「ちょっとどいてくれ~」
人だかりの中に駆けつける太刀川と
たまたま本部にいた小南は、その中に入って様子を見ようとしていた。
だぁん!!びしびし
風間「今においても、そうなるほど傷は深い。
それがどういうことか解るか!?」
その男の顔のすぐ横に、左拳を叩きつけ
壁にひびが入るも、叫び聞くのをやめなかった
「ひっ!?」
あまりもの恐怖のあまり、顔をこわばらせて悲鳴しかあげられなかった
風間「味方が一人もいない状況がどういうことか解るか?
そこにいる全てに間違っていると言われ
おかしいと言われ、常に悪いように言われ続け…
自分だけがおかしい、自分だけが悪いと思わされ続けたことがあるのか?
どれほどの心の傷を負ったか解るのか?
唯一話しかけられた人から裏切られたことはあるか?
友達だと言われ、いいように利用されて奪われかけ
その後、何事もなかったかのように距離を取られたことがあるか?
関わった人から否定され、殺されかけ、傷付き
終いには、己を大事に想う心さえも完全に消え果てた!!
これ以上傷付けまいと距離を取ることを選び
接し方も解らぬまま、生き続けることを選んだあいつの気持ちが解るか!!??
幸せを願って、距離を置き続けることを選んだあいつの想いが解るか!!!!??
これ以上負担をかけまいと話しかけることをやめた心が解るか!!!!!??」
胸ぐらを掴み、ぐいぐいと男を上へ押し上げる中
太刀川「…;
あれ、やばくね?;」風間を指さす
小南「言われなくてもそうでしょ。
止めに入るわよ?;」
やり取りを見ていた二人は、激昂する風間に対し
人ごみをかき分けて、止めに入ることを選んだ…
だが、まだまだ叫びは終わってはいなかった…