第5章 クリスマス
太刀川「それよりも
あいつをぱっぱと追いかけろ!
あいつほどじゃねぇだろうが…
あいつのことを解ってやれるのは、お前だけだろ?
それは、お前も同じなんじゃねぇのか?」
そう呟く太刀川に対し
三輪「…」
黙ったまま、恵土のいった方向へと走っていった…
そこは、屋上で…
三輪「…おい…」
呼びかけはするものの、話し辛そうにする三輪…
に対し
恵土「さっきはごめん…
フラッシュバックを起こしちまった^^;
昔の光景が、ありありと焼き付いてるもんで…
まだ、整理がつき切れてないんだ」
三輪「…
何で
両親を殺されても、そういられる?
どうして、近界民を大事に考えられる?
なぜ…」
言いながら、姉の死の光景が浮かび
口をつぐむ三輪…
それに対し、夕暮れを見つめながら呟くように言った…
恵土「…私はさ…
皆と一緒に居られる…
ただ、それだけでよかったんだ…
それ以上を
望む気なんて、なかったんだ…
もう、なくなったんだ…
ちょうど、こんな夕暮れ時だった…
駆けつけた時には、周りは建物の跡形もなくて…
息絶えた、幼い頃からよく知る人たちばかりだった…
木も建物も田んぼも…
全てが…何もかも、ひっくるめて…」
三輪「…
知っている世界、全部がか…?」
恵土「頷く)…」
三輪「…なおさら、解らない」
恵土「…ちょうど、8歳になった誕生日だった…
私は…
誕生日プレゼントを嬉しいとは思ってた…
それでも……
それよりも…何よりも…
ただ、あいつらと一緒に居れて…
バカみたいにやれて…それだけで……
それに代えられる想い出なんて…ないんだよ……」
両親たちとの笑顔に包まれていた頃を思い出す中…
目を伏せながら、絞り出すように吐き出される…
あの時、抱いていた思いを…
三輪「姉ちゃん…」
思わず、秀次からポツリと零された言葉も聞こえないまま
呟き続けた。