第31章 楽しみ
その後…
恵土「すーすー」
菊地原「…;
風間隊の隊室はおろか
ベイルアウトした後に横たわるベッドで寝るなんて…;
何考えてんだか;(溜息」
溜息ながらに、布団を持ってきてかけた…
菊地原「まったく。
風邪ひいたらどうするんですか?」
そう言いながら頭を撫でていると…
寝ぼけているのか、急に手を差し伸ばされて肩を掴まれた…
菊地原「ちょっ!」
恵土「しんどいよ。助けて…;」
その言葉と同時に、頭の中にある映像が浮かんできた…
「嘘つきで有名」
「自分のことばっか」
「無視してくる」
「可愛そうとか思われたいんじゃない?」
「死ねばいいのに」
今までに向けられてきた罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐と
それに対する、恵土先輩の悲鳴と叫び声が聴こえたように感じた…
それと同時に、風間さんの言葉が浮かんだ
風間「あの人は
他人の感情などが見えると同時に聞こえ、感じることができる。
たまたまその場にいた、残留思念までもがな。
だからこそ、最初はエンジニアとして籠っていたんだろう。
それでも…ひどい思いをしてきたらしいが…」
辛そうな顔をしながら、言っていた…
その言葉の意味が、今ではよく解る…
おそらく、先程伝わってきたのは…
感覚を共有したのと同じ感覚
そして、助けを求めているということ…
恵土「痛い。苦しい。しんどい。助けて…」
理解者が欲しくて話せば敬遠
余計に嫌な思いばかりさせられる
恵土「人なんか嫌だ。吐き気がする。死にたい。殺して…
お願いだから私を殺してっ!;」
そう言いながら抱き寄せてしがみついてくる中…
菊地原「清純すぎるんですよ、本当に…」
この世に生まれるには不釣り合いなぐらい、純粋過ぎるように思う…
だからこそ、神の力を持つことを許されたんだろうけれど…
菊地原「辛いことがあったんでしょうけれど、大丈夫ですよ。
僕が傍に居ますから、泣きたいだけ泣いて下さい。
まあ、生きてて欲しいから殺しませんけれど」
そう言った後、大丈夫だと言い聞かせながら撫で続けた…
不器用で、誰にも話さずに堪え抜こうとするその背を…
安心して、眠りにつくまで……
(1月8日AM4:13~AM6:39更新、1018~1026(9ページ))