第1章 春ノ刻 土方歳三
「ったく、志摩子って意外と強いんだよな……やっぱり家にいた時に散々やってきたとかか?」
「そういうわけではないのですが。元々、きっと頭を使う遊びが好きなんだと思います。私は」
「はぁ……これで何敗目かなぁ」
「平助、いい加減諦めろ。確か以前、こいつは斎藤と互角に渡り合ってたぞ」
「げっ、まじ!? そりゃ無理に決まってるわ――降参!」
平助様はばたんっとその場に寝転がり「疲れた!」と叫んでいました。私としては、もう少し打っていたかったのですが、歳三様も来たことですしこのくらいにしようと思います。
「志摩子、書類が終わった。出るぞ」
「わかりました。では平助様、また機会があれば打ちましょうね?」
「もう志摩子とは打たない! わかんねぇけど、暫くは俺が修行してからだ!!」
ふふっ、平助様はとても向上心が高い方なので素敵だと思います。いつも元気で明るく、少し屯所内の空気が落ち込んでも彼がいるだけで、一気に明るくなる感じがします。きっと彼は、新選組にとってなくてはならない方の一人なのでしょうね。
私は歳三様の後を追いかけ、すぐに外出の準備を整えた。
歳三様はいつもの浅葱色の羽織を着ず、私と共に外に出る。
「羽織はよいのですか?」
「あんなもん着ながら、お前を連れて外を歩くわけには行かねぇだろ。無駄に目立つ、散歩にならねぇ」
「そういうものですか……どちらに行かれるのですか?」
「そうだな。この時期、俺が一番好きなところへ連れてってやるよ」
歳三様は、徐に腕を組んで「んっ」と私に腕を向けて来た。訳が分からず首を傾げれば、手を掴まれた。