第4章 冬ノ刻 斎藤一
私は急いで千鶴様と共に、朝餉の支度を済ませて居間へと料理を運ぶ。その途中、起きて来た平助様達にも手伝ってもらい、何とか無事に朝を終えることが出来ました。
その後は今朝、歳三様が言っていた通りの会合。お言葉通り、一様は屯所内に残られる事になりました。正直なところ、私はあまり一様とお話したことがなく……どう今日を過ごせばよいのかと迷っていたりします。
でもこれはある意味、よい機会かもしれません。ここで少しでも、一様のことを知る絶好の機会。
とは思ってみるものの、やはり緊張で手は震えていたりします。
◇◆◇
歳三様達が出払った後、私はある程度の家事を終わらせると真っ先に一様の姿を探し始める。しかし……探せど探せど、その姿は何処にもなく。半ば諦めようとした時、道場の方で何か物音がした気がして、恐る恐る私は近付くことにしました。
そっと中を覗いてみると、木刀を手に一様が素振りをなさっておりました。その眼差しはとても真剣で、とても声をかける隙などありませんでした。
――ここは出直した方が良さそうです。
私が踵を返そうとすると、澄んだ声がゆっくりと私の耳へと届いた。
「……――志摩子、そこで何をしてる」
「……っ! 気付いていらっしゃったんですか?」
一様の方へと向き直ると、確かにはっきりとこちらに視線を向けて、少しだけ乱れた息を整えている一様がいらっしゃいました。
「あんたの気配くらい、すぐにわかる。総司と違って隠すことはしないからな……」
「総司様は気配を隠されて、覗きに来られるんですか?」
「そうだな。だがお陰で敵の気配にも敏感になる、一種の鍛錬の一つだ」
「なるほど……鍛錬は奥が深いのですね」
普段からそんな生活をしていると、気が滅入ってしまいそうだと思ったのは私だけでしょうか? 申し訳ないとも思いつつ、見つかってしまったのならここで立ち去るのも不自然でしょう。そっと道場内へと足を踏み入れ、少しだけ一様へと近付いた。
いつもの賑やかな彼らがいない分、屯所内も此処も酷く静寂に包まれているような気がしました。