第4章 冬ノ刻 斎藤一
しんしんと降る雪の中。春にはあんなに立派な花をつけていた桜の木も、雪の白に埋もれ春の時に見せた華やかさは成りを潜めていました。私は軽く雪かきをしながら、白い息を吐いて空を見上げた。
「また、降りそうですね……。急いで雪かきをしてしまわないと」
玄関先の雪かきは大切です。新選組の皆様が、急に出る事になった時にこの場が雪で埋もれていては危険です。私はせっせと雪かきに夢中になっていると、玄関の戸が開く音でぴくりと手を止めた。
「朝から何をしているかと思えば、雪かきか。俺も手伝おう」
厚着して現れたのは、一様でした。どうやら雪かきの音を聞いて、こちらへいらしたようなのですが……何やら申し訳ないことをした気分です。
「あっ、いえ! 私一人できちんとこなしてみせます。今日は大事な会合があると聞きます。ご準備もあるかと思いますし……ここは私一人で」
「気にするな。あんた一人がしなくてはいけないものでもない、雪かきには力もいる。それに……あんたに無茶されて怪我でもされた日には、副長に迷惑がかかる」
「……すっ、すみません」
「何故謝る必要がある。この寒い中、薄着で雪かきとは……これでも羽織っていろ」
そう言って一様は優しく私に、ご自分の羽織をかけて下さいました。申し訳ない気持ちはあるものの、私も小さくお辞儀をしてお礼を口にする。