第3章 秋ノ刻 風間千景
千景様と同じ鬼である私は、その言葉の通り新選組の方々とずっと一緒にいるなんてことは……不可能なんだと思います。それでも、願ってしまいます。祈ってしまうのです。一緒にいる時間が大切だからこそ、もっとと……。
それはやはり、いけないことなのでしょうか? 千鶴様は、一体どう思っていらっしゃるのでしょうか。
私が俯いていると、がたっと音を立て千景様が立ち上がりました。
「一々辛気臭い顔をするな、外に出るぞ」
「……あっ、はい」
気付けば会計も千景様が済ませてしまい、申し訳ない気持ちから慌てて払おうとしたのですが、何故か止められてしまいました。……腑に落ちません。
それから並んで歩いては、目的もなく。伺うように千景様を見れば、不意に目が合う。
「志摩子、今欲しい物はあるか?」
「欲しい物……ですか? そう、ですね……敢えて言うのであれば簪でしょうか」
「簪か……女は飾り物が好きだな」
「そうかもしれませんね」
控えめに私がそう言えば、千景様は私の手を強引に引いて近くの雑貨屋へと入っていきました。少し古い佇まいではありましたが、中はとてもしっかりしており……なんでしょう、少し高いお店では? と思わせるような、美しい簪が多く揃っていました。
「お前はどんな簪が好きだ?」
「わっ私ですか? そう……ですね。あまり簪をすることがないので、これといった拘りはないのですが……蓮の花のような透明感のある色の……簪が好きです。桃色でなくともよいのです! その……」
「俺の色にするか」
「はっはい?」
――今、千景様はなんと?
聞き返すことも出来ず、慌てていると千景様はいくつか簪を手に取り藤の模様が入った玉簪を一つ取ると、それだけを手元に残し私の髪に軽くあてる。