第3章 秋ノ刻 風間千景
「えっ、ちっ千景様……?」
「俺の妻に何か用か? 下衆共」
「なんだと!? 言わせておけば……っ」
男の一人が飛びかかって来たが、千景様は流石と言いますか……面倒臭そうにあしらって男を地へと転がした。するともう一人の男も、私の腕を離し千景様に飛びかかろうとした。けれど素手では勝てないと思ったのか、抜刀して挑発し始める。
「こっこれが見えねぇか! それ以上俺に近付くと斬るぞ!!」
「くだらんな……」
「んだと……ッ!」
刀を握って一気に千景様に斬りかかる、だが千景様も瞬時に抜刀し力でねじ伏せる。私が瞬きをしている間に、男達は地へと倒れ込み気を失っていた。騒ぎを聞きつけた者達が、次々に集まり始める。このままでは、新選組の人達がやってくるのも時間の問題だろう。
此処に千景様がいるのは……まずいです!
「千景様っ、こちらに!」
「おい……ッ」
私は無我夢中に千景様の手を取り、その場を離れるように走り出す。背後を軽く振り返ってけれど運がいい事に、新選組の人々の姿は見えなかった。本当は歳三様と合流すべきなのですが、今何処にいらっしゃるかもわからない。また先程の男達のような者に捕まっても困ります、ここは千景様に一緒にいて頂きましょう!
走り続けた先に、よく通っていた甘味屋が見えたので私は無意識に減速してしまった。