第3章 秋ノ刻 風間千景
「困りましたね……」
右見て、左見て。買い出しのためにと出た町の中、歳三様に連れられて此処まで来たのはよかったのですが……どうやら私はいつの間にか、はぐれてしまったようです。いつもはぐれないようにと、忠告されているのにも関わらず……私はなんて情けないのでしょうか。
大きく溜息を吐いて、とりあえずこの場から動こうとした……――矢先のこと。
「おうおう、姉ちゃん一人かい?」
「俺達と遊ばねぇか?」
「……」
私の目の前には見知らぬ男性が二人。腰に刀をさしているということは、浪士さんの可能性もありますね。白昼堂々、女の人に声をかけるなんて……なんてことでしょう。私はこの人達を無視して、踵を返した……のですが。
「おいっ! こっちが声かけてやってんだろ!? 何逃げようとしてんだよっ」
「……っ、離して下さい!」
腕を掴まれてしまい、私はその場から動けなくなってしまいました。男女の力の差は歴然、周りの方々も助けて下さる様子はありません。これは……運よく巡回中の新選組の皆様に助けて頂くのを待つか、歳三様が見つけて下さるのを待つしかないようです。
「俺達といいことしような……?」
「やめてっ、ください!!」
「ふん……っ、誰かと思えばこんなところで何をしている? 志摩子」
突然降って来た声に驚いて、顔を上げれば……なんと呆れ顔の千景様が私を見下ろしていた。