第2章 夏ノ刻 沖田総司
「君が僕に返したいだなんて……変わってるよ。僕のこと、怖い?」
不意に少しだけ身を離し、総司様の顔を覗き込んだ。眉尻を下げどことなく寂しそうに見えるのは、気のせいだろうか。何故か私までも少しだけ悲しくなってしまって……そっと総司様の頬に触れた。
「怖いだなんて、そんなことありませんよ。総司様は私を探して、このような路地まで来て下さってはありませんか。助けて下さって……本当にありがとうございます」
「……君って優しすぎるんじゃないかな。怖くないなんて、嘘つき」
総司様はそれでも、ほっと息を吐いてもう一度私を強く抱き締めた。
この人の悲しい顔は、見たくないように思います。ならば少しでも、総司様が笑顔でいられますように……どうか、どうか。せめてこの手を離さない私でありたい。
遠くの方で、風鈴の音が聞こえた。