第2章 夏ノ刻 沖田総司
「あ? なんだてめぇ、邪魔するなら容赦しねぇぞ」
「物騒なこと言うよねぇ、ちょっと浴衣の裾に飲み物が零れただけでしょ? 見た感じお茶か水のようだし……洗えば何の問題もないよね? その女の子も、こうして謝っているわけだし。ちょっと過剰じゃないかな?」
「なんだと!? この俺に指図するとは、いい度胸じゃねぇか小僧!!」
――男は腰にさしていた刀を抜刀させると、総司様へと刃を突き付ける。それを見た周りの人々は、悲鳴を上げ逃げ始める。けれど総司様が怯む様子などない。
「聞いてんのかてめぇ!!」
男が斬りかかる――刹那。総司様は瞬時に抜刀し、男の刃をいなし刀を振り上げた。その瞬間、男の刀は意図も容易く弾き飛ばされた。男が刀へと視線を向けている間に、総司様は大きく踏み込み相手の懐へと飛び込んでいく。
気付いた時には、男の喉仏に刃を突き付けていた。
「ひぃっ!!」
「君、僕が誰か知ってて喧嘩売ってるのかな?」
「だっ誰って……おっお前まさか!! その顔、見たことがある!」
「僕は新選組一番組組長、沖田総司。神妙にしろ」
「……くっ!」
男は両手を上げ、そのまま総司様に降伏した。ようやく場が収まったと思いきや、私は突然背後から口を押さえられる。