第2章 夏ノ刻 沖田総司
「あっ、えっと……ではその……一緒に食べて下さいませんか?」
「それはお願いってことでいいのかな?」
「はいっ、お願いします!」
「ふふ、まぁいいよ。君のお願いならね」
嬉しそうに微笑む総司様を見つめていると、何処かの屋台から賑やかとは違う物騒な声が聞こえてきました。一体何事でしょうか?
「おいてめぇどうしてくれんだよっ! お前のせいで俺の浴衣が汚れちまったじゃねぇか!!」
「すっすみません……」
「すみませんじゃねぇんだよ!! どう落とし前つけてくれんだ!? あ!?」
「……っ」
無意識に総司様の手をぎゅっと握り返せば、総司様が隣で大きく溜息を吐いた。
「ほんと、いるよねぇ……ああいう野蛮な人。こうやってお祭り騒ぎに便乗して、適当なこと言って金銭を巻き上げようとする。毎年あるんだよね、この近辺……うんざりするよ」
「去年も同じようなことが?」
「そうだよ。悪いけど志摩子ちゃん、少し此処で待っていてくれる? 近くで一君の部隊が見回りしてるだろうけど……この人混みだ、すぐには駆けつけてこれないだろう。僕が行って来るから、君はそこにいるんだ。いいね?」
「……わっわかりました」
総司様は繋いだ手を離し、腰にさしていた刀の柄に触れるといつものような凛と張りつめた空気を纏い、人混みを掻き分け難癖をつけている男の元へと足を踏み入れた。すると当然、男はぎろりと総司様を睨み付ける。