第2章 夏ノ刻 沖田総司
「総司様も浴衣を着て下さったんですね! 嬉しいです!!」
「左之さん達が煩くてね……君と一緒にお祭りに行くなら、浴衣の方がいいだろうって。僕はどちらでもよかったんだけどね? まぁでも、志摩子ちゃんが嬉しそうだからいいかな」
「はいっ、とても嬉しいです! ふふ、こうしていつもと違う総司様を見れるのは嬉しいです。とてもお似合いですよ」
「……っ、僕に一々そういうことを言わなくてもいいの! 似合っていようと似合ってなくても、興味ないんだから」
そうは仰いますが、少しだけ頬が赤い気がするのは気のせいでしょうか? 総司様の少し愛らしい一面を見た気がしました。総司様は「もう行くよ」とぶっきら棒に告げると共に、私の手を繋いで歩き始めた。
温かくて、それでいて私の方まで何やら照れ臭い気持ちになってしまいました。
町へと出れば、浴衣姿の女性や子供が多く、とても賑やかで。淡いぼんぼりや祭囃子などが、お祭りの中心へと進むごとに音が大きくなっていく。その分人も増え、だんだん歩きづらくなってくるのを感じた。
「志摩子ちゃん、何やりたい? それとも何か食べる?」
「定番の林檎飴を食べたいです!」
「あれがいいの? 別に構わないけど……林檎飴って丸ごと林檎を飴にしたやつでしょ? 君に食べきれるのかな?」
「うっ……そっそれは」
「どうでもいいけど。もしも志摩子ちゃんがお願いって言うなら、少しくらい食べてあげてもいいよ?」
意地悪そうな笑みを浮かべ、総司様が私の顔を覗き込む。外はすっかり夜へと変わり、お祭りの灯りだけが総司様の顔を映し出す。少しだけ妖艶な表情に見えてしまい、私は頬が熱くなるのを感じながら、慌てて総司様に返事をする。