第2章 夏ノ刻 沖田総司
「志摩子ちゃん、平助達が帰ってきたらお祭りに行かない?」
「お祭りですか? そういえば今日は町で夏祭りがあるそうですね。もしかして、それのことですか?」
「そうそう。僕が君によく似会いそうな浴衣を見繕ってきたから、好きな色を選んでみてよ」
「え?」
気付いた時には、総司様はご自分の荷物の中から綺麗に包装された浴衣達を三着程、縁側に広げ始めました。どれも色鮮やかで、選べて仰られてもその……つい迷ってしまいます。
「僕はこれとか合うと思うんだけどね?」
そうして総司様が見せて下さったのは、白地にボタンを基調とした四季を感じさせる色とりどりの花の模様が入った浴衣を見せて下さいました。他の二着もとてもよいのですが、総司様がよいと仰るのであれば、私の目にもそう映るようで。
「とても素敵ですね……! 綺麗です」
「でしょ? 志摩子ちゃんって凄く華やかな感じがするからね……千鶴ちゃんだったらもう少し桃色系とか暖色系を勧めるんだけど。志摩子ちゃんの場合は、こういう鮮やかで華やかな方が絶対似合うよ」
「そうでしょうか? そのように言って頂けたのは……初めてだと思います」
「ん、ふわりとした髪も……いつも下ろして愛らしいけど、今日は思い切ってまとめあげようね?」
「まとめあげですか。構いませんが……お祭りに行ってもよいのでしょうか?」
「寧ろよくないことなの? 君だって出たいでしょ、外。最近新選組は忙しいし、君のことを気遣って外出させてあげられてないからね。土方さんには僕から言っておくから、志摩子ちゃんは気にしなくていいんだよ」
「ありがとうございます。その……お祭りというのは、とても久しぶりなので楽しみです!」
「そう? それならよかった」
ほとんど記憶にはありませんが、小さい時に兄様に連れられよくお祭りに行っていたような気がします。あの頃も鬼の一族は出来るだけ陽の当たらない地を選び、生きることが多かったので頻繁にというわけではありませんでしたが。兄様の金魚すくいがとても素晴らしかったのだけは、覚えています。
その時のことを思い出すと、やはりお祭りと聞くと色々と思い出してしまいますね。