第1章 春ノ刻 土方歳三
「とっ歳三様……ッ!?」
「……色々と苦労をかけていると思う、すまない。志摩子、お前は新選組の一員でもないのに何度も危険な目に遭い、本心では嫌になっているかもしれねぇ。けどな、絶対に忘れるなよ。そして忘れてくれるな……必ず俺達が、いや……この俺がお前を最後まで守り抜いてやる。あの変な鬼達にも負けない、絶対にだ」
「……歳三様……」
「離れない、なんて……俺が言える資格なんてないが。お前が離れないでいてくれるなら、俺もけして離れはしない。だから……安心して、自分の今を生きろ」
「……っ、ありがとう……ございます」
抱き締められるのは慣れませんし、恥ずかしい気持ちも多いけれど……少しだけ歳三様の本当の気持ちに触れることが出来た気がして。それがとても嬉しい。この人はいつもお一人で頑張りすぎてしまう方で、お傍でどんなに支えたくてもそれさえも跳ね除けてしまう人。
それでも私は、どれだけの時間をこの人と過ごせるだろうか? どれだけの力になれるあろうか? 支えになれるだろうか。傍に……いられるのだろうか。
鮮やかすぎる今を通り過ぎて、桜の花びらが宙を舞う。特別な言葉なんてなくてもいいのです、ただ近くにいろと仰って下さい。
それだけで私は、この無力な身体を必死に動かして貴方の元へ駆け付けてみせます。