第12章 ワタシと屋上
抱きしめあうこと数分。ずっと膝立ちでいた私の膝は体重をささえコンクリートにあたっていたためだんだんと痛み始めた。
その痛みを和らげようと灰崎から離れようとするが彼はその腕をほどかない。
「も少しこーしてたい。」
またギュと私を抱きしめるがやはり膝がジンジンと痛い。
『膝痛くて…一回おりていい?』
すると灰崎が軽く腕を緩め
「ここ座ればいーじゃん。」
と胡座をかいた足を小さく揺する。
そこにストンとお尻をついて座るとより一層彼に包まれ私が灰崎に抱きついているような格好になる。
見た目は恥ずかしいものの居心地はとてもいい。
灰崎の胸元に顔をすり寄せる。
「犬みてぇ。」
彼からはふわっとムスクの香りが漂う。
『香水?』
その匂いはきついものではない。胸元まで顔を近づけてやっと軽く香ってくるぐらいのものだ。
「あーお前がくれたやつの匂いかな?今日はつけてねーんだけど…制服に匂いうつったか?…そんな匂う?」
『ううん…いい匂い。』
胸元でスリスリと顔を動かす。
「……今日さー俺ん家来いよ。久しぶりに一緒に帰ろーぜ?」
抱きしめたまま揺りかごのように身体を揺らして灰崎が言った。
『部活は?』
「……サボる。」
灰崎らしい返事だった。
『それはダメ。だからちゃんと行ったら一緒に帰ってあげる。……待っててあげるから。』
「ぇえー。うーーー、まぁーわぁったよ。」
あまり納得はしていないようだがしぶしぶ私の言った条件をのんでくれた。
キーンコーン、と授業の終わりを知らせる鐘がなる。
『そろそろ戻んなきゃ。さすがに次の授業はサボれないや。』
「別にいーだろ。…誰も気にしねーよ。」
『灰崎くんはよくても私はダ「祥吾。前みてーに祥吾って呼べよ。」
私の言葉に被せてきた。
『はいはい、ショーゴクン。とりあえず私行くね。』
パッ立ち上がり屋上の入口へと歩き出す。その姿を祥吾が見ている。
ドアの前でまた後でね!と言って私は屋上をあとにした。