第12章 ワタシと屋上
『…じゃぁワタシのことまだ好き?』
それは“私”の言葉ではなかった。
「……あぁ、………好き…だな…。…お前とこうして一緒にいられるのやっぱ嬉しいし。」
言葉を詰まらせながらも灰崎はそう答えた。
『じゃぁずっと好きでいてよ。』
また勝手に言葉が出る。
『ワタシ祥吾のせいで…祥吾のせいで……ッすごく寂しかった…。』
瞳には涙が溢れる。
「わりぃ……。」
私の身体が勝手に動き座っていた灰崎の正面に膝立ちで跨った。自分で動かそうにも身体はピクリとも動かない。
『ワタシはもう寂しい思いは嫌なの。皆離れて欲しくない。ワタシに悲しい思いさせて悪かったって思うならずっとワタシのことワタシだけのこと好きでいてッ!』
そのいきなりの行動に灰崎は驚いた顔をしている。
『……でもね。…ワタシはもう祥吾だけのものにはならない。皆といたいから…。だけど祥吾はワタシのものでいて?』
彼の肩を軽く掴むとそのまま彼の唇にキスをした。
その唇が離れるとフッと自分の身体に力が入り身体の自由が戻る。
と同時に灰崎に抱きしめられた。
「お前の側にいられるなら…俺はそれでもいい。……お前と離れて思った。俺、梓がいねーと無理だわ…。」
私を抱きしめる力が強くなる。もう離さない、そう言われているような気分になった。それに応えるように私も彼に腕をまわした。
「……なんか思い出したのか?」
私を抱きしめたまま灰崎がきいてきた。
さっき話していたのは多分“ワタシ”だ。話の流れ的にもなにも思い出していない、では誤魔化しきれない。
『…なんとなく…ね。細かいとこはまだわかんないけど。』
適当な言葉で流した。そっかとだけ返され私たちはそのまま抱き合っていた。