第12章 ワタシと屋上
「この前の部活のとき、なにか桃井と話をしていたね。途中で梓が泣きそうな顔をしてどこかへいってしまったが…まぁあらかた検討はついたよ。
ーー桃井に嫉妬でもしたんだろう?」
征十郎は私の行動をすべて見ていたようだ。そしてその心中もずばり言い当てる。
「同じなんだよ、以前のキミと。僕前にも言ったんだ。大輝には桃井がいる。梓の居場所はそこじゃないって。なのにまた同じことを繰り返しているからね。これ以上梓が傷つかないようにちゃんと二人のことをわかってもらおうと思って今日桃井を呼んだ。さすがにキミもバカじゃない。あの二人を見ていてわかるだろう?あの二人は離れない。」
一通り話し終えると授業に遅れてしまう、行こうと征十郎は歩き出す。
私はそれとは反対のほうへ向かって走り出した。征十郎はそれをみてため息をこぼすが私を追いはせずそのまま教室へと戻っていった。
(征十郎はわかってて嫌がらせをしたんだ。…ッ。むかつくッ!)
この前の帰り一緒に肉まんを食べた征十郎とは違い今日の征十郎からはなにか冷たさを感じた。
バンっ!とドアを開ける。私は屋上にきていた。
もう昼休みも終わる。誰もいないだろうと思って来てみたがそこには銀色の頭をした少年がいきなり開かれたドアの音に反応しこちらを見て座っていた。
灰崎だ。
私はズカズカと歩きその横に腰をおろす。
なんだ?と言う顔をして灰崎がこちらを見る。
『むかつくことがあったから話聞いてよ。』
「あ、お、おう。」
私の勢いに灰崎が押されている。
むかついたときは人に話を聞いてもらうというのが一番の発散法だと私は思っていた。だがいざ話そうと思ったらなんと言えばいいのかわからなかった。
沈黙が続く中、午後の授業の開始を知らせるチャイムが響いた。
その音が沈黙を破り灰崎が声を出す。
「…で、なにかあったんだよ?」
やはり私は口には出せずまた静かな空気が流れる。