第11章 “ワタシ”
「帰ろうか。」
と左手を差し出される。
え?と思い征十郎をみると征十郎もおや?とした顔でこちらを見る。
「手、繋がないのかい?」
『え?なんで?』
と思わず聞き返す。征十郎がムッと少し不満そうな顔をした。
そして私の右手を無理矢理とり歩き出す。その手に引っ張られ体が動いた。
『ちょっと!恥ずかしいから!』
バッと彼の手を振り解く。
「いつも二人で帰るときはこうしていたよ?誰も気にしないよ。」
そう言ってもう一度私の手をとり歩き出す。いつもこうしていた、と言われるともう一度振り解く気にはなれなかった。
(“梓”ちゃんもしかしてとんだビッチ女だったかも…。)
そう思ってしまった。
征十郎の横に並び歩く。
「部活見学、楽しかったかい?」
『うん、試合すごかった。ビューン、パッ、スパンって!』
擬音語が増えるがそれ以外にいい表現が見つからなかった。
「これから部活参加する?今日みたいに簡単なことからやっていけばいいと思うし。」
今日はスコアボードをめくるというものすごく単純な作業だったがなにか簡単なことからだったら出来るかもしれない、とは思ったもののやはり前回断ったとき同様、なるべくバスケ部には関わりたくはないなと感じた。
『うーん…まだ無理そうかな…。』
そう言うのと同じタイミングで私のお腹がグルルーッとなる。
ハッとして征十郎を見ると驚いた顔をした後声を出してクククッと笑った。
恥ずかしくなった。そこはちょうどコンビニの前で征十郎にちょっと待っててとと伝えると一人でコンビニに入りレジにいき肉まんをひとつ買う。
それを持って征十郎のもとへと戻る。袋から取り出し半分に割るとその半分を征十郎に差し出す。
『…はんぶんこ。一個食べると夕飯食べれなくなる。』
征十郎はそれを受け取ると物珍しそうにそれをみる。
「梓はこういうのも食べるんだね…。俺はこれ初めてだよ。」
私はすでにそれを口にいれはふはふとしながら
『ほいひーよ。たべてみてー。』
と言った。
征十郎はパクッとそれを食べると私と同じように口をはふはふとさせる。
少しして飲み込むと
「熱いね…でも美味しい。」
と今度はちゃんとフーフーと冷まし食べていた。
その姿は可愛らしかった。
肉まんを食べ終えまた手を繋ぎ帰った。