第11章 “ワタシ”

目の前で練習の一環ではあるが試合が始まった。

ポーンとボールが上がると敦がヒョイっとそのボールを叩く。

そこからはあっという間だ。

そのボールを征十郎がとると大輝にパスし音をたてゴールにはいる。

（ーはやっ！）

アニメで何回も試合をみてきたが一回の攻撃がこんなに速いとは思わなかった。

（これなら残り数秒でも逆転できるわけだ…。）

「あ、水崎さん2点です。」

アニメのシーンを思い出しボーッとしていた私はサポートについてくれていた部員からそう指摘され慌ててボードをめくる。

今度は虹村さんがボールを持ち反対側のゴールへ向かう。
緑間にパスを出すとその位置から緑間が綺麗なフォームでシュートをうつ。綺麗な弧を描きスパッとネットに擦れる音をたてる。

（緑間は3点っと…。）

コートのラインをみて判断したわけではなく緑間＝スリーポイントという私の中での公式があった。

その後も皆の動きが速く右へ左へ、左へ右へ、忙しく首を動かす。

大輝はシュートが決まるとよっしゃ！といいこちらをみてへへッと笑いピースをする。

私それに微笑み返しボードをめくる。

灰崎もそれに負けじとシュートをする。その姿はすごくカッコ良く見えた。


攻防を続けあっという間にその試合は終わった。

征十郎、大輝、敦のいるチームが勝った。

大輝がこっちにきたのでタオルを手渡す。

『かっこよかった。』

素直に思ったことを伝えると少し顔を赤くして
「おー。」
と返された。


そのあとも練習は続き虹村さんの一声で今日の練習を終えた。


征十郎が近くに来て

「帰り送るから少し待ってて。」

と言われたので体育館の周りをフラフラしながら待っていた。

三軍の体育館の前まで歩いているとボールの弾む音が聞こえ少し扉を開き中を覗くと大輝と黒子がいた。

（あまり関わっちゃいけないな…。）

声を掛けようか悩んだがなにか支障をきたすといけないのでまた扉を閉めた。

「梓、待たせたね。」

振り向くと制服に着替えた征十郎が立っていた。
いつからそこにいた？と思うくらい足音はなかった。