第11章 “ワタシ”
目を覚ますとなんとなく見覚えのある場所。
(あー久々の不思議空間。)
過去に二度来たというのが正しいのかはわからないがその空間からは私の知っている空気を感じた。
(今度は……グレー?)
その空間は今にも雨の降りそうなどんよりとした空のような色をしていた。
その中で空中に浮く光を見つける。
(なんだあれ?)
それに近づくと弱々しい光を発した球体のようなものだった。
私は恐る恐るそれに触れた。
ぐわん、っと激しい酔いのようなものを感じる。そしてそのあと
ーこんにちは、“私”ー
と声が聞こえた。
まただ。以前にもあったこの頭の中に響くような声。
その声の主がは間違いなく“ワタシ”であると私はわかった。
『あー“ワタシ”だよね?“水崎梓”ちゃん。』
ーそう、わかってた?ー
『…なんとなくだけどね。てかここどこなの?』
こんな場所にいながら普通に適応できている自分がいた。
ーここはワタシの心の中。“私”のなかでもあるよ。ー
そう答えた。
ーあなたは大輝のこと好き?ー
いきなりの質問に戸惑うが
『多分…』
とだけ答えた。
ーそれは本当にあなたの気持ち?ー
それはどういう意味かと尋ねる。
ーあなたは“ワタシ”、“ワタシ”はあなた。その気持ちは本当にあなたのもの?ー
少し難しい言い方だが意味はわかった。
『あなたは大輝のこと好きだった?』
ー好き…だったかな。でも…ー
少し何か意味を含めたような言い方だ。
ーワタシは皆が好き。征十郎も敦も真太郎ももちろん大輝も。皆好き。ー
(気の多い女だったのか…?)
ーふふっ。そうなるかもね。ー
『え?』
ーここはあなたの中でもあるの。考えてることなんてわかるよ。ー
そういうことね、と納得した。