第9章 青いキミと【※】
玄関で大輝を見送るとリビングへと戻る。
そこには大輝が脱ぎ散らかした部屋着とココアの入っていたマグカップが残っていた。
それらをそのままにし自室へと向かうとベッドのシーツがぐしゃぐしゃのままで手で触れるとまだ先ほどの温もりが残っていた。
誰もいない部屋をみて急に寂しさが込み上げる。
まだ温もりのあるベッドに横になり布団を被る。温かさは感じるがそこに大輝はもういない。
なんだか虚しくなりベッドから起き上がるとまたリビングへと戻り服とカップを片付けた。
カップを洗いながらついでに夕飯の支度をしようと思い冷蔵庫の中を覗くとたいした食材は入っていなかった。
材料をかき集め鍋なら適当に突っ込んでもなんとかなるかと思い棚から土鍋を取り出し下準備にとりかかる。
一人暮らし歴の長かった私はある程度の料理ならなんとなくで作れるようにはなっていた。
具材をテキパキと切っていると
バタンッ!
と玄関の扉の閉まる音が聴こえ兄が帰ってのだとわかった。
キッチンをそのままにパタパタと玄関に向かうとびしょ濡れの兄がいた。
「あ、ただいま!外、雨すごいぞ。」
『シャワー浴びておいでよ。風邪引いちゃう。』
兄はそうする、と言い洗面所へ向かった。
キッチンに戻り作業に戻る。
といっても鍋だから出汁をとったら鍋に適当に具材をきって放り込んで調味料で適当に味をつけたら終わりだ。
キムチ鍋のもとがあったから今日はそれをいれて弱火で火にかけ兄がお風呂から上がるのをまった。
「お!ごはん用意してくれたの?」
兄が戻ってきてキッチンを覗く。
いいにおいーといいながら冷蔵庫から水を取り出しコップにそそぐ。それをグビグビっとのんで
「…あれ?誰か来てた?」
兄がそういったのは食洗機のなかにワタシたち二人は使わないマグカップが入っていたからだ。
『あー友達が来てたよ。雨凄かったから雨宿りに。』
「征十郎くん?」
間髪入れずに兄が征十郎の名を出した。なぜそこで征十郎の名前がでるのだろうか。
『ううん、違うバスケ部の子。』
「敦くん?」
『…違う。』
「あー真太郎くん?」
『違うよ。』
「あーー大輝くんか。」
やっとその名前が出てきた。消去法で述べていき大輝の名前が最後だったので兄の中でそのマグカップを使ったのが大輝だと確定していた。