第9章 青いキミと【※】
大輝はまだ話を続ける。
「そしたらお前事故って記憶ねぇって言うからこの関係ともオサラバかって思った。まぁあのままズルズル行くよりここできれてよかったのかもなとも思ってた。でも今日またやっちまった。お前を抱きたいっていう欲に勝てなかった…。ごめん…。」
ワタシは手をのばし大輝の頭を撫でた。
『大輝が謝ることじゃないよ…。したいって言いだしたのはワタシだし。……大輝、忘れちゃってごめんね…。』
頭を撫でながら謝ると大輝がさっきより強い力でギュッと抱きしめてきた。
「もう忘れんな…。もういなくなんなよ…。」
消えそうな声で呟く。
『…いるよ…ここに。』
大輝の背中に手をまわしギュッとした。
ーーーーー。
〜♪〜♪
そのまま抱きあっていたら遠くから電子音が聴こえてきた。
『……あ!携帯なってる!』
薄暗い中時計に目をやると時刻は19時になろうとしていた。
『お母さん仕事終わったんじゃない?』
パッと起き落ちてた服をひろって大輝にも渡しササッと身につけると二人でリビングにむかった。
リビングに戻るとテレビは付けっ放しだったがやはりその電子音は大輝の携帯で母親からの着信を知らせるものだった。
大輝が電話に出て手短に話を終わらせると今から迎えに来るってと言いエナメルのバッグから部活の練習着を取り出しそれに着替える。
ワタシは濡れている大輝の制服を袋にまとめた。
電話を切ってからさほど時間はたっていないが大輝の携帯に母親から到着したとの連絡が入る。
「はぇーよ。」
とテーブルのうえに置きっ放しにしていた冷め切ったココアを大輝は一気に飲み干しそのままワタシのほうへ向かいキスをした。
そのキスは短かったもののすごく濃厚なものだった。
唇を離すと
「甘いか?」
と笑いながら聞いてきたのでコクリと頷いた。
そのまま荷物を持ち玄関まで見送る。下まで送ると言ったが母親に見られてたらなんか恥ずかしいからと言って断られた。
靴をはき終えると
「ちゃんと鍵しろよー。」
と大輝がドアに手をかける。
その手を引き大輝の首に腕をまわし精一杯の背伸びをしてチュッとキスをした。
『……また来て欲しい…。』
と添えて。
おう!と大輝は笑って返事をし玄関をあけ帰っていった。
ワタシの口の中はまだココアの味がほんのりとしていた。