第8章 赤いキミと【※】
次の日の朝、征十郎と顔を合わせたくないな…。
と思いつつも兄に余計な心配をさせたくない為いつものように家を出た。
そしていつもどおり学校につき教室にはいると当たり前のように彼の姿はそこにあった。
(冷静に…冷静に…。)
なにか変なことを言ってしまわぬよういつもと変わらず席につきおはようとだけ挨拶をした。
するとこちらをみると
「おはよう梓」
と微笑み彼は読んでいた本にまた視線を戻した。
(あれ?案外普通だ。)
征十郎との朝はいつもこんな感じだった。私が変に意識しすぎているのかと思っていると
「赤司ーおはよー!水崎さんもおはよ!」
昨日の彼がやってきた。
征十郎がパタンと本を閉じ彼にむけおはよう。と返事をする。
私はすごく気まずかった。もとはといえばこの男子が昨日ワタシを誘わなければあんなことにはならなかったのだ。
だが無視するわけにはいかないのでおはようとだけ返し反対を向き机に突っ伏した。
やがて先生が来てガタガタと皆が席に着く音がするとワタシは顔をおこした。
「…いい子だね、梓は。昨日言ったことわかっているじゃないか。」
と小声で征十郎がワタシをみながら笑っていた。
少し忘れかけていた昨日のことを思い出し顔が赤くなる。それをみてさらに
「今度はお仕置きじゃなくてご褒美が欲しいのかな…?」
とまたフフッと笑うので
『違う!!!』
と朝礼中だというのに少し大きめの声で返してしまった。
担任がなんだー?とこっちを見たがなんでもないです、すいません。と返しまた話が朝礼の話題に戻るとフフッと笑うだけで征十郎はそれ以上は何もいってこなかった。
そのあとも淡々と授業をこなし特にちょっかいなどかけてくる様子もなくいつもどおりの学校生活を過ごした。
二、三日過ぎてもやはり何もなくこの前のことは本当になにもなかったかのように征十郎はいつもどおりの征十郎であった。
ただ一つだけ変わったのはワタシが挨拶以外あの男子との会話を避け極力関わらないようしたことだった。