第6章 青い空
『お兄ちゃんって彼女いるの?』
私の質問に慌てることなくスムーズに兄が答える。
「今はいないよ。」
“今は”ってことは前はいたんだ。なにか心がモヤっとした。
(……あれ?モヤ?え?私ブラコン化してる?)
この胸のむかつきは嫉妬という感情というのがはっきりとわかった。そのむかつきが嫌で私は自分ものへと話題を変える。
『ワタシは??ワタシは彼氏いた?』
先ほどはすらっと答えた兄がグッと眉をひそめこちらをみた。そして少し悩んだ様子で
「いたよ。」
と。
まぁ事故の前には別れてたけど。すぐに付け加えた。
(へぇ、いたんだ。)
自分のことだが少し他人事のように感じる。だが恋愛話をするのは結構好きなほうだ。自分に関係のない人の事に関して首を突っ込んだりはすることはないが自分や友人のこととなるとそのことだけで軽く数時間は話せる。こういう一面を考えると自分も女なのだな、と思う。
『えっどんな人だった??』
興味津々で尋ねる。
兄は先ほどと変わらず眉をひそめ少し嫌そうな顔をする。
「俺はあんまり好きじゃなかったかな。何回かここに遊びに来てたりもしてたけど愛想もよくないし素行も悪いって聞いてたから。だけど梓はいつも嬉しそうに彼氏の話するからさ。ショーゴがね、ショーゴがねって。お前にとってはいい奴だったのかもな。………あー、そのショーゴってのが元彼な。確か“ハイザキショーゴ”。」
ーーーーーーーーえ。
自分の恋愛話を聞こうとわくわくしながら兄の話を聞いているとまさかという人物の名前が出てきてワタシは固まる。
ハイザキショーゴ
あの灰崎祥吾……だよね。