第5章 放課後の屋上【※】
もちろんお昼にそんなことはなかった。虹村の名前が出たのは征十郎から部活の話をしたときだけだったし直接本人を目にするのは今が初めてだ。
「はははッ。だよな?記憶ぶっとんでんのに俺のことだけわかったら運命感じるわ!」
どうやら誤魔化せたようだ。
『あの、虹村さんはなんでここに?部活中では?』
この話題から話を逸らしたかったため違う話題を持ち出した。
「あぁ、灰崎っつぅ一年坊が無断で部活サボってて。アイツのことだから屋上で寝て夕方んなって寒くなって目ぇ覚ましてそろそろ帰ろうとしてんじゃねーかな?って思ってよ。屋上覗きに行こうと思って。」
流石というべきだろうか。虹村さんには灰崎レーダーでもついているのだろうかと思うほど彼の行動を見抜いていた。
『灰崎くんってシルバーの髪の子ですか?』
ワタシの質問に虹村さんはあぁ、と頷く。
『その子なら屋上にいましたよ。』
告げ口だ。ワタシにあんなことをしたんだから虹村さんにしばかれてしまえ!
「ほんとか?よし!ちょっと後輩可愛がってくるわ。」
と虹村さんは階段を駆け上がった。
虹村さん灰崎のこと大好きなんだなぁとなんだか胸がほっこりしワタシは階段を降りた。
「あ!水崎!」
見上げると虹村さんが階段の踊り場から顔を覗かせ
「なんか辛いことあったらすぐ言えよー!お前携番変えただろ?俺の番号伝えろって赤司に言っとくから!」
そう言い残すとばたばたとまた階段を駆け上がる音がした。
見た目も中身も赤司を除いた周りにいる一年生に比べ二年生って大人だなと感じた。
ワタシはなんだか疲れたので今日の学校探索はヤメにして昇降口に向かい帰路についた。