第5章 放課後の屋上【※】
私はあまりこの男に好印象を抱いていなかったため軽く頭を下げるとその場から立ち去ろうとした。
すると灰崎がワタシの腕を掴み自分の方へ引き寄せた。
それは一瞬の出来事だった。
ワタシを自分の腕の中に引き入れると右手でワタシの顎をグイッとつかみ唇を重ねてきたのだ。
ワタシは目を見開き突き放し離れようとするが唇は離れたものの男の力には敵わずそのまま彼の腕のなかにいることとなる。
彼はワタシの後頭部を掴み再度唇を重ねてきた。
『ふぁ…』
ワタシが息をしようと唇をひらいた瞬間その唇の隙間を抜い彼の柔らかな舌がワタシの口内に侵入してきた。
『…んぁ…ん……ふぁ。』
嫌がるがワタシの後頭部を固定した手を振りほどくことが出来ずワタシの口内は彼の舌に犯され続けた。
『ッん……や………ッ。』
ワタシの口元からだらしなく唾液が垂れる。
ちゅ…くちゅ…と淫靡な音と荒くなる息、それとともにその唾液の量は増して行く。
歯の裏や上顎など隅々まで舌を這わせワタシの舌も絡めとっていく。
『ふぅ……んぁ…』
彼の舌がワタシの口内から抜かれるとワタシの上唇を唇ではむっと噛み再度唇に軽くちゅっと音をたててキスをした。
やっと彼が唇を離すと唇から銀色の糸が伝う。ワタシの口元の唾液を指ですくいとるとその唾液をペロッと舐めとった。
「…王子様のキスってか?お姫様はなんか思い出したか?」
なんて意地悪気に笑う彼とは反対に目にたくさんの涙をためたワタシは一番の力を出し気の緩んだ彼を突き放すと地面に置いていた自分の鞄を手に屋上を飛び出した。
なんでアイツにこんなことッ。
屋上に一人残された灰崎。
ーーーバンッッ!!!!
梓が出て行った屋上で灰崎は手すりを思い切り蹴った。
「ーーーーーっクソッ。なんで忘れんだよ。」
彼の言葉はワタシには聞こえていなかった。