第4章 奇跡の出会い
授業が始まるがそこでワタシは重大なことに気が付いた。
(教科書がない。)
現実の私は学校の教科書など学校の机の中に入れっぱなしで持ち帰って勉強などするタイプではなかったのでカバンにはいつも財布、携帯あと筆記用具ぐらいしか入れていなかった。
その癖で今朝も最低限の荷物だけ準備をし家を出たのだが今机の中を覗くとルーズリーフの束と幾つかの文房具しか入っていなかった。
“梓ちゃん”はご丁寧に教科書を全て持ち帰える真面目なタイプだったのか、と頭を抱えた。
その姿を見た征十郎が
「一緒にみようか。」
と隣り合わせになった机の真ん中に開いた教科書をのせた。
『あ、ありがと。』
開かれた一つの教科書を覗き込むと思った以上に征十郎との距離が近づいた。
(うわ、近い。なんかいい匂いする。)
横目に彼の顔を見ると教科書の文を辿っていて綺麗な目を伏し目がちにしていた。
(睫毛長いなー。肌も綺麗。目の保養になるわー。)
しばらく彼を見ていたら征十郎がん?と反応をしこちらを向く。
近い。
「せっかく教科書を共有しているのにこちらを見ていたら意味がないだろう?」
征十郎は柔かに指摘をしてきた。ワタシが見ていたのに気づいていたのだ。
なんだか恥ずかしくなりワタシは教科書に目をやる。
そんな姿を今度は征十郎が見つめていた。
顎に右手をやり肘をつきワタシの顔を覗いてくる。
「梓、顔が真っ赤だよ?」
クスリと笑い肘をついている反対の手でワタシの頬を撫でた。
自分の顔が熱くなるのがわかった。
その反応を楽しむかのように征十郎は何度か頬を撫でると右手にシャーペンに持ち頬から手を離しノートを取り始めた。
(なにこれ…心臓爆発するーーーー!)