第4章 奇跡の出会い
ワタシに向かい差し出された手だがワタシは状況が理解出来ず彼を見つめたままその場に硬直する。
「水崎さん?」
もう一度彼に名を呼ばれ
(ハッ!!そうだ水崎はワタシだ。)
と我にかえり
『あ、よろしく。』
と右手を差し出し彼の手に答える。
簡単に握手を交わすとスルッと手をほどき
「じゃぁ教室にいこうか。失礼しました。」
と一礼をし応接室を出て行く。ワタシも後に続いた。
教室へ向かう廊下。赤司少年の数歩後ろを歩いているが私の脳内はどうにかなりそうだった。
(え、これってなに?え。本物の赤司?赤司征十郎だよね?!髪まじで赤い!!てか小さいな!!ワタシとそんなに変わんない?歩き方綺麗だなーー。)
頭の中が赤司のことでいっぱいになりこれが夢の中だという認識はなかった。
赤司の後ろ姿を見ながらついて行っていた。
彼がピタッと足をとめこちらを振り返る。
数歩空いた空間を一歩一歩ワタシの方に近づくと目の前に立った。
「愚問かもしれないが……」
そうワタシの目を見つめながら
「本物に何も覚えていないのか?」
と、その言葉と同時に彼の右手がワタシの左頬に触れた。
彼の手が触れた場所が熱い。
少女漫画でこんなシチュエーションがあったら思わずニヤついてしまうワンシーンだが先ほどの興奮状態とはうってかわってなんだか悲しい気持ちになった。
『ごめんなさい。』
そう答えると左手頬にあった彼の手が頭へと移動し軽く頭をひと撫ですると
「梓があやまることではないよ。」
とどこか悲しげな表情で微笑んだ。
『ワタシたちって仲良かったの?』
と返すと
「お互いファーストネームで呼び合うくらい仲良かったかな。」
ファーストネーム、、、征十郎、、か。
自分の中でこの少年は征十郎というより赤司と呼んだ方がしっくりとくる。
だが今まで征十郎と呼んでいたのにいきなり赤司と呼ぶのも失礼かと思い名前で呼ぼうと決めた。
『仲良くしてね、征十郎。』
「あぁ。」
征十郎はワタシのまた頭を撫でた。