第3章 ここはどこ、私は誰?
食事の時点でなんとなくは気付いていた。
あんな高級そうなところで食事なんて一般家庭がそんな簡単に行けるような場所ではない。
移動にしても高校生がたった数十分の距離をタクシーで移動したりしないだろう。
そんなことを考えていたら兄が紅茶の入ったマグカップを両手にやってきた。
「ここが梓と俺の家だよ。なんか思い出した?」
ふるふると首を横に振る。
だよね、と言い持ってきた片方のマグカップを差し出された。
それを受け取ると兄はワタシの横に座った。
「今日さ病院の迎え本当は車出してくれるって言ったんだけどさ、いきなり運転手付きの車が迎えにきたら梓がびっくりしちゃうんじゃないかと思って無理言って俺一人で迎えいったんだよねー。」
紅茶をふーふーとしながら兄が話す。
『うちってお金持ちなの?』
ある程度親しみを覚えた兄にならこういった質問は軽く聞けるようになっていた。
兄は本当に優しく記憶のないワタシにわからないことはなんでも教えてくれる。
「金持ちって言い方はあんまり好きじゃないけど裕福な方だとは思うよ。贅沢な暮らしはさせてもらえてる。」
そっかとだけ呟き紅茶を口に運んだ。
「色々わかんないこととか不安なことだらけだと思うけど何かあったらなんでも俺に言えよ?俺は梓のお兄ちゃんだからな!」
頭をポンっとされ兄はニカッと笑った。
なんだかホッとしてワタシは少し照れて笑った。