第3章 ここはどこ、私は誰?
(これは私の知っている“焼肉”ではない。)
水商売をしていたとき何度か同伴でこういったお店に連れていってもらったことはあったがここまで品のあるお店に行ったのは数回しかない。
ましてや高校生が気軽に入れるような店ではない。
キョロキョロと周りを見ながらオドオドしていると兄が横でクスクスと笑った。
「大丈夫だよ。さっきも言ったけどいつもお世話になってるとこだから。いきなりここはびっくりだったかな?でも梓はきっと喜んでくれるよ!佐藤さんの料理はすごい綺麗で美味しいから。」
「楓くんにそういってもらえるとうれしいなー。」
と佐藤さんが話に入ってきた。
と同時に目の前に綺麗な前菜が置かれる。
(あー。コース料理か。美味しそう。てか焼肉じゃなかったの?まぁいっか!)
とナイフとフォークを使い前菜を口元に運ぶ。
(…っ!!)
『美味しい…。めっちゃ美味しい!!』
兄がふふふと笑い同じように口に運ぶ。
「美味しいって言ってもらえてうれしいよ。それにしても梓ちゃんはやっぱり綺麗に食べるね。ナイフとフォークの使い方がすごく綺麗。」
佐藤さんはそう言い次の調理に取り掛かっていた。
「佐藤さんはね多分いつもの梓じゃないってわかってるよ。でもわかったからってこっちのことに首を突っ込んでくるような人じゃない。すごく気の使える人なんだ。だから梓も気にせず好きなように食べればいいからね。」
兄にそう言われなんとなく肩の荷が下りた。
「そういえばさ梓、学校はどうする?まだ退院したばかりだし無理に行けとは言わないよ。ただ状況が状況だからさ。行きにくかったら休めばいいから。」
前菜の味にうっとりとしていたが兄にそう言われ自分が今学生だということを思い出す。
(学校か…中学校…。)
『行きたい…かも。』