第16章 赤いキミに【※】
「そろそろ楓さん帰ってくるかな?」
時計を見るとすでに18時を回っていた。
『多分…そろそろ…。』
それじゃぁと言い制服のジャケットを羽織る征十郎。
『あ…夕飯…食べていけば?』
「いきなりじゃ悪いからね。また今度ご馳走にならせて。」
わかった、と返し玄関へ向かう。
「これ、大切にしてね?」
私の首にかかったネックレスにそっと手をかける。
『うん…ほんとありがとう。』
「それと…さっきも言ったけど…ちゃんと僕のことみてね。」
顎をクイッと掴まれ征十郎と視線があう。少しの沈黙をはさみキスされる!と思い若干身構えたがその手は離れじゃあねとドアをあけ征十郎はあっさりと帰っていった。
バタンと閉まったドアを少しの間見続けたあとゆっくりとした足取りでリビングへと戻った。
(…あ…まただ。)
ソファーにストンと腰を降ろすと大輝のときと同じ寂しさが私を襲う。
ただひとつだけ違ったのは征十郎から貰ったネックレスに手をやると少しその寂しさが和らいだことだった。
と同時にまた私の瞳から涙が零れる。
(…あんだけ泣いたのに…まだ……。)
私の頭の中では大輝と祥吾のことがぐるぐると回っている。
何かを考えるわけではない。ただただ彼らが好きなのは“ワタシ”ということだけがもやもやとした感情を伴って頭の中を回っていた。
どうしようもない事実だ。解決策など見当たらない。
泣くほど彼らのことを好きだったのかな?っと思うところもあったが涙が零れるということはそういうことなのだろう。
私は泣くことしか出来なかった。