第16章 赤いキミに【※】
その指で頬をなぞる。
「…また泣いてる。」
私の瞳から一筋の涙が流れた。
アイサレテイタノハ
ワタシジャナイ
心の中でもやもやと渦巻く黒い感情に切なさにも似たグッとした胸の痛みを感じる。
「…泣かないで。僕がいる…。」
征十郎が私の横に座りグッと身体を引き寄せ私を抱きしめた。
黒い感情は消えないが征十郎の温かさを身体に感じた。
『…ック……ヒック…』
何故こんなにも涙が溢れるのか。
征十郎に頭を撫でられる度堪えていたものがドッと流れ出す。
「梓…僕のことをみて。僕はずっと梓のことみてるから。」
征十郎に抱きしめられたまま涙を流し続け少しの時間が経った。
涙は枯れ幾分か気持ちも落ち着き征十郎からそっと離れる。
『…ッごめんね…肩…濡れちゃった…』
征十郎の肩は私の涙で濡れ水色のシャツが少し濃くなり色付いていた。
「このぐらい平気だよ。」
そっと私の頭を撫で微笑む征十郎。
少し怖いと思っていた征十郎が今はこんなにも温かく感じる。
「僕の方こそ…今日は泣かせすぎた。すまない。」
『…ううん…。……ありがとう。好きって言ってくれて。』
征十郎が言わなければ気付かなかったかもしれない。聞かなければ彼らとの関係に変化はないのもしれない。
ただそのことに気付いたことは今の自分にとって大切なことである。と同時に今の自分を想ってくれる征十郎がいなければもっと自分の存在意義を見失っていたかもしれない。
彼は今の私にとってヒールであると同時にヒーローでもあった。