第16章 赤いキミに【※】
「…大丈夫かい?」
征十郎にテーブルの上にあったティッシュで私のお尻についたモノを拭き取りながら声をかけられるがそれに答えるほどの力がなくぱたりとそのままソファーに崩れ落ちる。
「無理させたかな?…でも梓すごく厭らしかったよ?気持ちよかった?」
ソファーの下に座った征十郎がくすりと笑いながら私の頭を撫でる。
思わず征十郎とは反対側に顔を向けながらもコクリと頷いた。
ふふふと満足気に笑うと頭を撫でながら
「さっきの話の続きなんだけどね…」
と征十郎が話し始めた。
ん?と思い少し力が入るようになった身体を起こし乱れた服を整えながら話を聞く。
征十郎は真っ暗なテレビの画面の方を向き話を続けた。
「梓が梓じゃないみたいだ…って話。」
『…うん。』
「僕はそうだとしてもどうもしないと言ったが、それは記憶がなくなった今の梓のことを近くで見続けてきてその梓も好きだと感じたからどうもしないとと言ったんだ。もちろん以前の梓のことも好きだった。ただ今ここにいる梓が前とは違ったとしても僕は受け入れられるよ、と言うこと。」
尚も私の方を向かず淡々と話し続ける征十郎。
「だが、他の奴らはどうだろうね。」
征十郎のその言葉に胸が悪い意味でドキンとした。
「アイツらが見ているのは以前のキミであって今のキミではない。なら今の梓が以前の梓ではないと言ったらどうなるだろうね。まぁそこまで理解力があるとは思えないが………梓はどう思う?」
『私は……。』
征十郎の言いたいことはわかった。
彼らは以前のワタシを好きであって今の私のことは見ていない。
彼らが好いているのはワタシであって私でない。
じゃぁ彼らにとって私は何?
「今の梓のことを好きなのは僕だけなんだよ?」
くるりとこちらを振り返り真剣な眼差しで見つめてくる征十郎。
「梓…キミを好きなのは僕だけだ。」
こちらに手を伸ばしその手がふわりと頬に触れた。