第16章 赤いキミに【※】
ふっと後頭部を抑える力が弱くなり私はその隙にグッと両肩を押し彼から頭を離す。
『…ッ征十郎!!…やめて!』
「………。」
無言で私を見上げる征十郎。
腰に回された手には力がはいっているため身体を離すことは出来ない。
「……大輝や灰崎はよくてなんで僕はダメなんだい?」
『…え?』
その発言に驚いた顔で彼の顔を見るとその目はひどく冷たいものだった。
「……その顔。やはりそうか。大輝に関しては二人の間の空気が最初に比べて変わったから何かあったとは思ったけど。…灰崎もか。」
彼は私の目を見つめたまま話を続ける。
「灰崎からも最近またするんだよ、ムスクの香り。以前梓と付き合ってた頃と同じ匂い。………何があった?」
ぐらっと自分の視界が眩むと私の視界は天井をむいた。征十郎が私の身体ごとソファーに倒れこみ私の上に覆いかぶさる状態になっていた。
「…梓?灰崎と何をした?」
征十郎の質問になんと答えたらいいか分からず顔を逸らす。
「答えたくない?じゃあ僕が思ったことをしてもいい?」
私が返事をする前に征十郎は私に跨り体重を掛け身動きを取れないようにすると私の両手首を頭上で片手で押さえつける。
そして自分のネクタイをはずしその両手首をきつく縛り上げた。
『…!!征十郎ッ!怒るよ!はずしてこれ!』
ジタバタと動くことはしないがキッと彼を睨みつける。
「……。」
スッと征十郎の手が頬に触れ顔が近づく。またキスをされる、と思い顔を逸らすが征十郎はその手前でピタッと動きを止めた。
「………君は本当に梓かい?」
その言葉により一瞬時が止まったかのような錯覚をおこす。
(………え…なんで。)
色々な考えが頭の中をぐるぐると回る。
そうしてゆっくりと征十郎のほうに目をやると彼は真っ直ぐにこちらをみてその質問の返事を待っているようだった。