第16章 赤いキミに【※】
我が家に入り靴を脱ぐ。
脱いだ靴を揃えるところをみるとやはり征十郎の育ちのよさを感じる。
「楓さんはまだ帰ってこないの?」
『うん、まだかな。多分7時くらいには帰ってくると思うけど…』
今はまだ4時過ぎ。決まった曜日には早い時間に帰ってくる兄だが今日はその日ではなかった。
征十郎の座っているリビングのソファーにキッチンで用意した霰茶とお茶請けのお菓子を運んだ。
「そうだ、梓。これ。」
と言ってバッグから小さな紙袋を取り出し私に渡す。
『なぁに、これ?』
「ふふ。開けてみて?」
その紙袋の中に手を入れると中から可愛らしいリボンのついた小さな箱が出てきた。
『プレゼント…?なんで?』
「いいから。中をみて。」
征十郎に言われたとおり箱のリボンをとり中を確認する。
中にはピンクのようなオレンジのような綺麗な石がついたネックレスが入っていた。
「梓の誕生石だよ。」
私は九月生まれで誕生石はサファイアのはず。青じゃないの?と征十郎に尋ねる。
「パパラチアサファイアといってね、ピンクとオレンジの中間の色なんだ。どう?気に入ってくれた?」
『うん!すごい可愛い。…でもなんで?』
誕生日はすぎている。クリスマスにしても早い。なぜいきなりプレゼントをと疑問を抱いた。
「今年の誕生日のこと…この前楓さんに話していたのが聞こえてしまって…。梓が覚えていないならいっそ前回のことはなかったことにしてちゃんと改めてお祝いしたいなって。俺はちゃんと祝ってもらったから。だからこれは俺からの今年の誕生日プレゼント。」
(聞かれてたんだ…。)
「誕生日おめでとう…梓。」
征十郎のその優しい気遣いに涙が零れそうになる。
『ありがとう…でも、これ高いんじゃないの?』
「値段のことは気にしないで。俺が梓に似合うだろうと思って贈りたかったものだから。……つけてみて?』
箱からそれを取り出し手を首の後ろに回し留め金に触れるがなかなか上手く留まらくじれったさ感じる。
「後ろ向いて髪をあげてて?つけてあげる。」
征十郎の手を借りようやくつけることができた。くるっと振り返りどう?と征十郎のほうを向く。
「うん、似合っているよ。」
そう言いながら私の首筋からそのネックレスのチェーンに指を沿わせた。