第15章 テスト週間
「これここに置いておけばいいかな?」
そこに征十郎が飲み終えたカップをまとめて運んできてくれた。
『あ、うん!ありがとう。』
征十郎がダイニングテーブルの上にそれをおくとそのままそこに腰掛けた。向こうでは四人がまだわーわーと騒いでなにかをしていた。
「梓は本当に楓さんと仲がいいね。」
座りながらこちらに向かって話しかける征十郎。
「うん、ブラコンだからね、梓は。」
『私がブラコンじゃなくてお兄ちゃんがシスコンなの!』
「まぁ俺がシスコンなのは認めるけど梓もブラコンだろ?え?俺の片思いだった?かなしい!!」
『違うよ!違う!!お兄ちゃんは好きだよ!…って征十郎の前で何言ってるの?!』
パッと征十郎のほうを見ると顔を伏せ肩を小刻みに震わせくくくと笑っていた。
「でも羨ましいよ。俺には兄弟がいないから。もしいたら二人みたいに仲良くしていたかな?」
頭の中で征十郎にもし妹がいたらと想像する。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。まさにその言葉が似合う少女が思い浮かんだ。
『多分征十郎に妹がいたら気が気じゃないよ。うち以上のシスコンになりそう。』
「…梓も十分可愛いけど征十郎くんの妹だったら本当に箱にしまっておきたくなるくらいの可愛い子なんだろうな。」
兄も同じような想像をしたようだった。
『俺が梓のお兄さんだったら箱にしまったうえで鍵もかけますよ。』
笑いながらそういう征十郎だがその言い方は少し本気を感じさせるものがあり思わず背筋が凍った。
そんな話をしているうちに時計は21時を回っていてそろそろ帰ろうという流れになった。
兄が残ったお菓子を袋にまとめ敦に渡すと喜んでそれを受け取る。
玄関まで皆を見送ると征十郎が最後にお邪魔しました、と軽く頭を下げ出て行った。
先ほどまで賑やかだったリビングが兄と二人になると静けさを感じさせた。
食器などは洗い終えていたためテーブルの上を綺麗にするだけで部屋の片付けは終わった為お風呂に入りいつもどおりの生活に戻った。
週末を挟んだらテストが始まる。自分のテストへの焦りはないが大輝の心配をしながら私は眠りについた。