第15章 テスト週間
「てか梓ちんのプレゼントっていつも可愛い系だよね。」
敦に言われそうなの?と聞き返す。
「俺のときもリップとあとはこーんくらいのしろくまの抱き枕。」
敦は手を軽く伸ばしそのサイズ感を表現する。
「俺のときは爪やすりと爪の強化剤とハンドクリームだったのだよ。」
「俺はキャラクターもののパンツと靴下。」
「私は誕生日早かったからそのときには貰えなかったけど梓ちゃんの誕生日のときにお祝いできなかったからって可愛い化粧ポーチもらったなー。」
その話を皮切りにそれぞれの誕生日に何をもらったかという話が始まる。
大輝のプレゼントは毎回ひどいや征十郎のプレゼントは身構えるなどわーわーと盛り上がる。
しかし皆がその話題で盛り上がるなか私はへぇと相槌を打つだけで話に入ることが出来なかった。
食べ終わったケーキのお皿を持ちちょっと、と言いその場を抜けキッチンで洗い物をしていた兄の横にならびその手伝いをする。
「俺の手伝いはいいから皆と話していていいよ?」
兄が気を使いそういうが私はそのまま兄が洗った皿を拭く作業を続けた。
『ううん、いいの。私わかんないから。ほら、覚えてないしさ。皆の話の腰おっちゃうし。』
皆の誕生日。それを祝ったのは私ではない。記憶がという問題ではなく“私”には皆の誕生日を祝った過去いうもの自体がない。思い出すことすら出来ないのだ。その大きな壁のせいで疎外感を感じてしまい兄の元に逃げてきた。
「そっか…。」
兄はそれ以上何も言わなかった。