第3章 ここはどこ、私は誰?
部屋に残された私とスーツ姿の男性二人。
何を話せばいいかわからず私はまだ椅子に座っているほうの男性を見た。
男性は私の視線に気付くと柔らかい笑みをつくり
「ほら、父さん。梓が困っているよ。」
とベッドの近くまで寄ってきた。
「俺のことわかる?」
そう尋ねられるがもちろんわからない。
ごめんなさい。とだけ告げると彼は私の頭をぽんぽんとしながら
「だよね?父さんのことだけ忘れて俺のことだけ覚えてたら父さん可哀想だったから逆によかった。俺は水崎楓。梓のお兄ちゃんだよ。」
彼は終始ニコニコしながら私の頭を撫でていた。
「こっちは父さん。俺らのね。」
中年の男性は楓という成年に紹介され私に目線をあわせ
「どこか痛いところとかはないか?」
と心配そうな顔で話しかけてきた。
夢の中であるというのに彼らのことをわからないということが申し訳なくなった。