第1章 worst world
「そういえば、何でフィオを追いかけてたんだ?」
そう聞くと、ランスはアルベロの愚痴から逃げるようにしてこちらを向いた。
「あぁ。それがよ、フィオの奴珍しく俺といっしょに飯食いに行くとか言いだしたと思ったら「じゃっ」とか言って高い料理食い終わった途端に逃げやがった」
「悪いのはフィオか」
ランスはしゃがみこんで「俺の金使い込みやがって……」とうなだれ始めた。
「じゃあ、どうするか? フィオを探すか?」
「…いや、多分フィオは森に逃げてるから…。もう無理だ…。俺に借りた6038702セント絶対に返すつもりねぇよ…」
「フィオに金貸して帰ってくると思わない方がいいと思うが」
ランスが随分項垂れている所に、俺は質問を続ける。
「その森ってのはあれか?」と指を指すと、ランスはちらっとこちらを見て小さく頷いた。
「結構な大きさだな」
「ここらに住んでる人達もあまり近づかないような森だよ。1度入ると、中々出て来れない。何でかは知らないが、フィオは道が分かるらしい」
頭を掻きながらランスは大きくため息を吐いた。
「あ、森だったら大丈夫だぞ」
俺はある事を思い出し、ランスにそう言う。
「へ? 何? 大丈夫って」
意味が分からなそうにランスが聞く。
俺は先程からずっと「ストーカーストーカーストーカーストーカー…」と死んだような目で言っているアルベロに声をかけた。
「おい、アルベロ。フィオは森にいるらしい。お前なら探せるだろ」
「誰がストーカーですって?!!」
「んな事言ってねぇだろ!!」