第1章 worst world
俺たちの踏む土は、広葉樹の葉の隙間から零れる日差しで所々光っていて、風が吹くたびに葉と伴って光は揺れる。
「なぁ、あれ何……?」
「大丈夫だ。俺も最初の内は真面目にビビった」
俺の隣でランスは引き気味の顔を見せた。
それもそうだろう。
「なるほど。あっちですね。はい。そこに家があるんですか」
俺たちの視線の先には、アルベロの姿があった。
「はい! また途中で他の方に聞いてみますね。ありがとうございました」
「カオスすぎて何も言えない…」
アルベロは多くある木の中から1本に喋りかけていたのだ。
こちらから見ていれば、それは異常者以外の何でも無く、ランスの言いたい事も分かる。
ま、昔から見ていた俺としてはもう慣れたもんだが。
「アルベロって、ストーカーじゃないとしても、かなりヤバいと思う」
張本人アルベロは、そんなランスの言葉に気づいていないのか「お2人ともー!」とこちらに手を振っている。
「あの方によると、フィオさんの家はあっちの方にあるというので、行きましょう」
「『あの方』って…。『木』だよな…。アルベロって……やっぱり異常者…?」
「『やっぱり』は余計です!!!」
「アルベロは異常者!」
「そーいう事じゃないです!!」
アルベロがある程度落ち着いてきてから、俺は今だ疑問そうなランスに言った。
「アルベロは植物と話せるんだよ」
「何だ…それ…。それ、アルベロの魔力って事か? 植物と話せる魔力って…すごいっていうか、非戦闘的っていうか…だな」
それなら納得と言わんばかりに、ランスは顔を明るくしたが、それに対し俺は首を振った。
この世界では、平均的に見て普通は出来ない事が出来る場合は、それは魔力だと判別する。アルベロの「植物と話せる」というのも、他から見れば、魔力の一種に見えるだろう。
「まあ、普通はそう考えるよな」
「え…? 違うのか」
不思議そうなランスに、割入るアルベロが口を開いた。
「アルベロは、この形になった時から、草木、花、植物の全てと意思を通わせる事が出来ました」
「この形って…どういう―――」
「ユアンやランスのような……
『人間』の形に」